M&Aで注意すべき事例

M&Aで注意すべき事例|中小企業庁ガイドラインより

M&Aは正しく進めれば事業を残す有効な手段ですが、進め方を誤ると破談や廃業につながることもあります。ここでは中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」に掲載されている、注意すべき4つの事例をご紹介します。

同じ失敗を避けるために、ぜひ目を通してください。


⚠ 事例1:決断が遅れて、条件が悪くなった

「もっと早く動いていれば」──先延ばしにした結果、業績が悪化し、当初の提示額よりも大幅に安い金額での譲渡となってしまいました。

事例の概要

◆ 譲り渡し側:A社

  • 業種:ギフト用品販売(小売業)
  • 売上高:2億円
  • 従業員:15名
  • 業歴:40年

◆ 譲り受け側:B社

  • 業種:ギフト用品販売(小売業)
  • 売上高:9億円

◆ 関与した支援機関:地域銀行、事業承継・引継ぎ支援センター

中小M&Aの経緯等

【意思決定に至るまでの経緯】 A社は創業者・会長の竹橋清(仮)が90歳と高齢ながらまだ実権を握っており、その婿養子・現社長の上原雄太(仮)に発言権はなかった。A社の取扱商品や販売方法は時代遅れで徐々に売上が減少し、遂に2期連続で経常赤字に陥った。上原の経営意欲は低下しつつあり、危機感を持った竹橋も渋々了解の上、地域銀行から紹介された事業承継・引継ぎ支援センターに譲渡相談することになった。

【成立に至った経緯】 同センターは他地域の同業他社B社にA社との中小M&Aについて打診した。B社は他地域への進出を希望しており、A社事業を譲り受ける意思も固まっていた。一方、A社は業績と資金繰りが急激に悪化し、事業の継続が危ぶまれた。竹橋は、長年の取引先や従業員のことを第一に考え、譲渡代金の早急な支払を条件とし、当初オファーを受けていた金額よりも相当低額でB社へ事業譲渡を実行した。

【成立に至った後の経緯】 竹橋は既存取引先に迷惑を掛けず、従業員の雇用継続が図れたことは満足しているものの、決断が遅れたため低額での譲り渡しとなり後悔の念が残った。

当センターより: この事例は、事業承継の検討を先延ばしにすることのリスクを示しています。業績が良いうちに動けば、より良い条件での承継が可能です。M&Aは成立しましたが、竹橋さんには「後悔の念が残った」──この言葉が、早めの行動の大切さを物語っています。


⚠ 事例2:着手が遅く、資金が尽きて破産

多忙で事業承継を先送りにしているうちに、体力の衰えとともに売上が半減。M&Aを決意したときには、もう時間が残されていませんでした。

事例の概要

◆ 譲り渡し側:A社

  • 業種:設備工事業
  • 売上高:5,000万円
  • 従業員:5名
  • 業歴:40年

中小M&Aの経緯等

【意思決定に至るまでの経緯】 A社代表者である大岡千太(仮)は70歳で、後継者候補もいないものの、多忙な毎日に追われ、事業承継を考える暇がなかった。A社は、金融機関から約2億円の借入を行い、なんとか事業を継続していたが、大岡は体力が徐々に落ち始め、満足に営業できなくなってしまった。それと並行して、A社は顧客が少しずつ離れていき、3年前に約1億円あった売上も約5,000万円に落ち込んだ。資金繰りは日に日に悪化していき、2〜3か月以内に資金繰りが尽きることが見込まれる状況に陥ってしまった。そこで、大岡は弁護士に相談し、社外の第三者に事業を譲り渡そうと決意した。

【不成立に至った経緯】 資金繰りが悪化する中で、A社が譲り受け側(スポンサー)を探す時間的な余裕はほとんど残されていなかった。また、弁護士が紹介したM&A専門業者が懸命にスポンサー探索を行った結果、スポンサー候補が複数社、A社に関心を示したものの、活気を失ったA社の事業を譲り受ける決意をしたスポンサーは現れなかった。

【不成立に至った後の経緯】 A社は、資金繰り悪化に耐えきれず破産し、廃業した。また、A社の金融機関からの借入について個人保証(経営者保証)していた大岡も、同時に破産した。

当センターより: この事例は、最も避けたい結末です。体力の衰え、売上の減少、資金繰りの悪化──これらが重なってからでは手遅れになることがあります。「忙しくて考える暇がない」という方こそ、早めにご相談ください。相談は30分からでも可能です。


⚠ 事例3:情報が漏れて、買い手が撤退

あと一歩で契約というところで、経営者が関係者にM&Aの事実を漏らしてしまい、買い手が激怒。交渉は打ち切られ、最終的に廃業に至りました。

事例の概要

◆ 譲り渡し側:A社

  • 業種:製造業
  • 売上高:3億円
  • 従業員:20名
  • 業歴:30年

中小M&Aの経緯等

【意思決定に至るまでの経緯】 A社代表者である遠藤茂(仮)は、後継者候補がいないことから、金融機関からの紹介でM&A専門業者に中小M&Aの相談を行った。

【不成立に至った経緯】 M&A専門業者が迅速に動いたことから、4か月で、B社とのマッチングが実現した。基本合意を締結し、あとは最終契約に向けて交渉を詰めていく段階にあった。遠藤は、当該M&A専門業者から「M&Aが成立して無事に決済が完了するまでは、M&Aに関する情報は慎重に取り扱うようにし、自社の従業員や社外の方には決して知らせないように。」と再三にわたって忠告されていた。しかし、遠藤は、B社が譲り受け側に事実上内定したと認識して安堵し、まだ決済どころか最終契約も完了していないにもかかわらず、従業員や一部取引先を含め、色々な関係者にB社の名前を出した上で、中小M&Aを行おうとしている事実を伝えてしまった。B社は、遠藤により中小M&Aの情報が流出したことを知って激怒し、信頼関係が破壊されたことを理由に、その後の中小M&Aに関する交渉を打ち切った。

【不成立に至った後の経緯】 その後、A社は、遠藤が90歳を迎える頃まで徐々に事業規模を縮小していき、最終的には廃業に至った。遠藤は、B社との交渉が決裂した後になって初めて、中小M&Aに関する情報の取扱いの重要性を理解した。

当センターより: M&Aにおいて秘密保持は最も重要なルールです。決済が完了するまでは、ご家族であっても慎重な対応が求められます。「誰に・いつ・どこまで伝えるか」の判断も含めて、当センターがサポートしますので、ご安心ください。当センターは公的機関として秘密厳守を徹底しています。


⚠ 事例4:不誠実な対応で信頼を失い、破談

マッチングは順調だったのに、資料を出さない、条件を後出しする──不誠実な対応が買い手の信頼を壊し、交渉決裂。最終的には社長の死後に社内抗争を経て廃業しました。

事例の概要

◆ 譲り渡し側:A社

  • 業種:運送業
  • 売上高:10億円
  • 従業員:30名
  • 業歴:30年

中小M&Aの経緯等

【意思決定に至るまでの経緯】 A社は地域密着で運送業を営んでいたが、社長である近藤勝(仮)が75歳となり、後継者候補がいなかったことから、中小M&Aを決意し、M&A専門業者にマッチング支援を依頼した。

【不成立に至った経緯】 A社は地域内では有名な企業であり、同地域内のB社とのマッチングがすぐに実現し、近藤の有するA社株式の全部譲渡を前提に、順調に基本合意締結に至った。しかし、近藤は、B社への対応を甘く考えており、B社によるDD(デューデリジェンス)にほとんど協力せず、4か月経ってもDDの必要資料がほとんど揃わない状況であった。また、近藤は、A社を手放すのが段々と惜しくなってきたため、譲渡条件がほぼ固まった後になって突然、中小M&A後も自分をA社の顧問として登用し、A社の経営を自分に委ねるよう、B社に対して要求するようになった。B社は、近藤の不誠実な対応に嫌気が差し、A社及び近藤との信頼関係が損なわれたことを理由に、A社との中小M&Aを断念し、交渉を中止した。

【不成立に至った後の経緯】 その後もA社において中小M&Aが成立することはなく、近藤は数年後に持病で亡くなった。突然トップ不在となったA社は、役員・従業員間での経営権争いを経て元役員により承継されたが、長い社内抗争を経てすっかり弱体化し、その後、廃業した。

当センターより: M&Aは譲り渡し側・譲り受け側の信頼関係が基盤です。「迷いが出てきた」「条件を変えたい」と思ったときは、相手に直接ぶつけるのではなく、まず当センターにご相談ください。間に入って調整することも、私たちの大切な役割です。


これらの失敗から学べること

4つの事例に共通するのは、次の3点です。

1. 早めの着手が最大の防御策 事例1と2は、いずれも「もっと早く動いていれば」という結末です。業績が良く、経営者が元気なうちに動くことで、選択肢も条件も広がります。

2. 秘密保持の徹底 事例3のように、決済完了前に情報が漏れると致命的です。M&Aの情報管理は、専門家と一緒に進めることで守ることができます。

3. 誠実な対応と覚悟 事例4は、「手放す覚悟」が固まらないまま進めたことが原因です。迷いがあること自体は自然なことですが、その迷いを買い手にぶつけるのではなく、支援機関に相談してください。


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本ページの事例は、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」参考資料4より、中小企業庁の許可を得て引用しています。 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html

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よくある質問

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Q. 相談は本当に無料ですか?

はい、すべて無料です。経済産業省の委託事業として運営しているため、相談料・紹介料等は一切かかりません。

Q. 情報が外部に漏れませんか?

秘密厳守を徹底しています。従業員や取引先はもちろん、ご家族にも知られることはありません。

Q. まだ何も決めていませんが相談できますか?

もちろんです。「まず現状を整理したい」という段階でのご相談が一番多いです。

Q. 小さい会社でも対応してもらえますか?

はい。従業員数名の個人事業主の方もご利用いただいています。規模は問いません。

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